「僕が死んだあの森」 ピエール・ルメートル 著。

僕が死んだあの森 本の紹介
どん
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今回は本の紹介です。
「その女アレックス」でブレイクした、
ピエール・ルメートルの、

「僕が死んだあの森」です。

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結論 僕が死んだあの森は読むべきか?

エンタテイメント作品、特に心理サスペンス好きにはたまらない一冊だと思います。

個人的には、これほど心がざわめく小説は久しぶりだった。(初めてかも)
何せ、語り手の少年、アントワーヌが冒頭、怒りにまかせて六歳の男の子を殺してしまうのだから。
そして、その遺体を森に隠す。やがて、行方がわからなくなった男の子の捜索がはじまり、捜索隊やメディアがアントワーヌの住む村にやってきて騒ぎが大きくなって行く。

語り手が人を殺してしまうお話なので、自然と語り手の立場に立って読んでしまう。

犯罪がバレるかバレないか。
誰かに見られていなかったか。
誰かに気づかれるのではないか。

犯罪を犯した人間の心理が、細かく描かれていて、読んでいるコチラも緊張が絶えなかった。

いつか捕まるのではないか。
自分の人生は終わりだ。

と、いつも心にやすらぎがなくなっていく様子もよく分かる。

 

 

僕が死んだあの森 ストーリー

表紙の見返しには、次のようにストーリーが書かれています。

母とともにちいさな村に暮らす十二歳の少年アントワーヌは、隣家の六歳の男の子を殺した。森の中にアントワーヌが作ったツリーハウスの下で、殺すつもりなんてなかった。いつも一緒に遊んでいた犬が死んでしまった悲しみと、心の中に積み重なってきた孤独と失望とが、一瞬の劇場になってしまっただけだった。でも幼い個どrもは死んでしまった。
死体を隠して家に戻ったアントワーヌ。だが子供の失踪にムラは揺れる。警察もメディアもやってくる。やがてあの森の捜索がはじまるだろう。そしてアントワーヌは気づいた。いつも身につけていた腕時計がなくなっていることに。もしあれが死体とともにみつかってしまったら・・・・・・。
じわりじわりとアントワーヌに恐怖が迫る。十二歳の利発な少年による完全犯罪は成るのか?殺人の朝から、村に嵐がやってくるまでの三日間ーーーその代償がアントワーヌの人生を狂わせる。

「その女アレックス」「監禁面接」などのミステリーで世界的人気を誇り、フランス最大の文学賞ゴンクール商を受賞した鬼才が、罪と罰と恐怖で一人の少年を追いつめる。先読み不可能、鋭すぎる筆致で描く犯罪文学の傑作。

 

僕が死んだあの森 読みどころ

犯罪サスペンス、心理サスペンスなので、
語り手、アントワーヌの心の揺れが細かく描かれている。
犯罪がバレないか、捜査当局が逮捕しにこないか、
読んでいるこちらまでハラハラしてしまう。
とてもリアルで人を殺してしまった人間の心理を体験しているようだった。

もう一つは、表現がユニークかつ豊かで的確なところ。
読んでいて、人々の心理、行動を描写している箇所は、
的確に表現していて、上手いと感じた。
そして、違和感なく読める文章なのもよかった。(翻訳者のおかげか。)

思わず笑ってしまったユニークな描写は、
隣家の少女とアントワーヌの官能シーン。
意図せず関係を持ってしまう場面で、次のように書かれている。

二人は唇を重ね、その瞬間アントワーヌはしくじったと思った。
それは彼が嫌いなキスだったのだ。彼女の舌は執拗に動き回り、歯科検診でも受けているようだ。

「歯科検診」のようなキス
笑ってしまったが、
「歯科検診」、その単語だけでアントワーヌの胸の内をうまく表現していると思う。
(歯科検診を好きな人いないですよね。いたらすいません)

つづく文章も印象的だった。

 

それは無邪気な戯れ、親しみからくる愛、近くにいながら触れ合うことがなかった年月の総決算だった。どちらにもそうするべき理由がないいまだからこそ、できることだった。幼馴染みで、二人の間には長い歴史があり、それをただ整理しておきたい。

 

いいたいことをここまでうまく文章で表現できることをうらやましく思ってしまった。
翻訳分でそう思うということは、翻訳自体もいいということかもしれない。

 

僕が死んだあの森 マイナスポイント

唯一あげるとすれば、マイナスポイントは人物の呼び方がコロコロ変わるところ。
翻訳本のあるあるで、別の本でも上げているんですが、
本書はその傾向が強いと感じました。

例えば、
アントワーヌの母ブランシュの呼び方では、
「母」
「クルタン夫人」
が使われている。

読んでいると、「クルタン夫人」って誰だっけ・・・となる。

呼称を変えることで、その文章がどの(誰の)立場の文章かがわかるのだが、
慣れるまではちょっとかかった。

 

僕が死んだあの森 まとめ

中盤をすぎるまで、心理サスペンスにどっぷり浸かって、
心がざわついて仕方がなかった。
犯罪がバレるのではないか・・・という居心地の悪さ

読後は、余韻を残して、
アントワーヌの人生と、アントワーヌの母の人生に思いを馳せてしまう。
同時に多くの人の人生も、少なからずアントワーヌの人生に重なる部分があるのでは・・・と思ってしまった。

ラストはちょっと唐突に付け足した感があったが、
最高の心理サスペンスをたっぷりと味わわせてもらった。

 

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