90歳をむかえる、人気作家の人生回顧エッセイ。平岩弓枝 著 「嘘かまことか」

平岩弓枝 本の紹介
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今回はブックレビューです。
「御宿かわせみ」などで人気の、
作家・脚本家の平岩弓枝さんのエッセイ、
「嘘かまことか」です。

 

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「嘘かまことか」 見た目も内容も可愛らしい一冊。

「御宿かわせみ」などで知られる、
作家・脚本家によるエッセイ。

著者は令和4年で90歳を迎えるとのこと。
長く一線で活躍している作家として、
やはり著者の考えやこれまでの人生について、
ぜひ読みたいと思った。

まず、本自体がいい。
サイズが一般的なハードカバーの大きさよりひとまわりくらい小さい。
だから、かばんに入れて、時間の空いたときに、
ちょっと読むのにいい。

ひとつのエピソードは、10ページ程度で、
ちょうどいい分量。

表紙の著者の写真もいい。
隅田川(?)の川岸で佇んで、
こちらに優しく視線を向けている。
その姿といい、その表情といい、
生き生きとしていて、
いい人生を送ってきたんだろうな・・・と、
羨ましくなってしまいます。
本を読むと、実際は、
いろいろと苦労されているのがわかりますが・・・。

 

 

昭和34年、「鏨師」で第41回直木賞受賞。

著者の平岩弓枝さんは、
「鏨(たがね)師」で直木賞を受賞している。

まだまだ駆けだしの作家時代の受賞で、
当時は著者自身が一番戸惑っていた。
受賞時のエピソードはもちろん、
当時の小説家の勉強会のような集まりの様子や、
小説家を目指す若者が、
小説家に師事する、独特の関係についても書かれている。

今や失われつつあると思われる、
小説家の師匠と弟子の、
濃密な人間関係にちょっと感心してしまった。

師匠が倒れた時に、
著者と夫が病院を手配する。
家族以上に親しくもあり、
かつ、師匠を尊敬している著者の姿勢は、
もはや失われた日本人の姿を見るようで、
少しでも見習いたいと思った。

 

初・平岩弓枝

著者の本を読むのは恥ずかしながら今回が初めて。
「御宿かわせみ」はいつか読んで見ようと思っていて、
手が回りませんんでした。
(ちなみに「御宿かわせみ」は、元テニスプレーヤーの沢松奈生子さんが、
オススメの本として、書評番組で紹介していたのを記憶しています。)

 

間もなく90歳を迎える、大作家の人生
とても興味ありますよね

本書はそれを満たしてくれるような内容が書かれています。

まだまだ駆け出しの作家が、
直木賞を受賞して、一気に忙しくなってします。
また、その頃に結婚し、私生活でも大きな変化がある。

小説家や文壇にある、師匠や弟子の関係も興味深い。
著者は、長谷川伸に師事している。

勉強不足で初めて知った作家だが、
その長谷川伸の新鷹会という小説の勉強会に参加し、
そこで同じく小説家を志す、後の旦那さんと出会っている。

今ではあまりないようなこの師匠と弟子、
小説家を志す同志の関係も面白く読んだ

有名人や著名な作家とのエピソードも。

名だたる作家のエピソードが登場するのも読みどころ。

著者は50年前(1ドル・360円の時代)に、
作家の阿川弘之さんに誘われて、
横浜・ニューヨーク間の船旅に出かけている。

その長い船旅の間に、
イベントで行われた仮装大会に、
日本人のチームとして参加する。

仮装の出し物のアイディアを依頼された著者は、
困りはてるが、
旦那さんのアイディアで、
神式の結婚式の仮装を提案して、採用される。

旦那さんは、神主として、
結婚式を日常的に行っていた。

著者も父親の手伝いで巫女をやったことがあるので、、
立ち居振る舞いはお手の物。
ただ、それらしい衣装を揃えるのに苦労する。

巫女の白衣や赤の袴。
神主の烏帽子。

新郎新婦役は、
阿川弘之さんと、以前から知り合いだった、
外国人の奥さんが務めることになった。

和風の結婚式の珍しさや、
阿川さんのおどけるような演技で、
著者のチームは優勝してしまう。

優勝賞品は、銀の皿とシャンパン1ダース。

海外旅行が一般的ではなかった時代の話なので、
ニューヨークまでの船旅と聞いただけで、
ちょっとハイソな感じを想像したが、
エピソードはもっとハイソな感じ。
なかなか聞けないような話で印象的。

 

 

さらに印象的なエピソードは、
昭和天皇に拝謁する話。

ある日、宮内庁から電話がかかってきて、
天皇陛下が著者に会いたがっているので、
皇居まで来てくださいと連絡がくる。

終戦を経験した著者は、
天皇を神と思っていた世代なので、
とても緊張して皇居に向かい、
昭和天皇と拝謁する。

天皇と直接あって話した人は少ないと思うので、
単純に興味深い。
また、昭和天皇の人柄も伺い知れるのも興味深かった。

 

 

 

「嘘かまことか」まとめ

その他、次女が大病で生死を彷徨って、
無事、快方にむかった話。
戦時中、一人福井に疎開した、というような戦争の話。
家族での海水浴で、夫と娘が漂流しかけた話。
直木賞受賞後に起こった、処女作出版のいざこざ。
などなどこれまでの人生を著者が振り返る。

エピソードはどれも主張は強くないが、
著者の考えや生き方がにじみ出てくる。

奇をてらわず、地道に、目の前の仕事に精一杯励む。

その姿勢が著者が長く活躍できた秘訣のように思う。
人生の後半、著者の生き方はとても参考になるように思った。

 

 

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