クメール・ルージュに翻弄された少年少女の運命。「誕生日パーティー」 

誕生日パーティー 本の紹介
どん
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今回はミステリー・エンタテイメント小説を紹介。
クメール・ルージュのカンボジアで、
運命に翻弄される少年・少女を描く、
ユーディト・W・タシュラー著、

「誕生日パーティー」です。

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結論・「誕生日パーティー」は読むべきか?

エンタテイメントの小説が好きなら読むべきです。
ミステリーの要素は少ないですが、
文芸色の強いエンタテイメント小説という感じで、
文章も読みやすくて、誰が読んでも楽しめると思います。

また、カンボジアについて知りたいという人にもオススメ
ポル・ポト政権下でカンボジアの人たちが、
どんな人生をおくることになったのか。
小説ではありますが、リアルに体験できると思います。

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著者と本書、「誕生日パーティー」について

著者のユーディト・W・タシュラーは、1970年生まれのオーストリアの作家。
本作は、「国語教師」に続いての邦訳2作目にあたる。

物語は、建築家のキムの50歳の誕生日パーティーに、
息子のヨナスがサプライズのプレゼント(ゲスト)として、
テヴィを招待するメールから始まる。

キムとテヴィは30年以上前に、
ポル・ポト政権下のカンボジアで、家族を失くし、
タイの難民キャンプに何とか逃れて、オーストリアに亡命してきた過去を持つ。

女三代で暮らす、マルタとモニカとイネスの家に引き取られることなる、
14歳のキムと12歳のテヴィ。
イネスも12歳で、モニカは娘の教育・成長のためになるのではないか・・・と、
キムとテヴィを受けいれることにする。

著者のあとがき(「謝辞」)によると、
この話は、著者の実体験をもとにしているらしい。
それは、著者の家族が、カンボジア難民を受け入れたことがあるから。

カンボジア難民の少年少女と子供時代を過ごした著者の体験がもとになっていて、
カンボジア難民の体験を膨大な聞き取りをもとにかかれているので、
当時のカンボジアの様子はリアリティーがすごく感じられる

 

「誕生日パーティー」のあらすじ

ポル・ポト政権下を生きのび、難民として、オーストリアに亡命した、キムとテヴィ。
その二人を受け入れた、母・モニカ、娘・イネス、祖母・マルタの一家。

2016年の現代のオーストリアと、
30年以上前のポルポト政権下のカンボジアを中心に、
時間と視点を入れ替える形で、
キムとテヴィ、そして、イネス、モニカの人生が、断片的に描かれていく。

キムとイネスは結婚して家庭を持ち、
現在は娘と二人の息子に恵まれている。
そのキムの50歳の誕生日に、息子のヨナスがサプライズとして招待した、テヴィ。
数年ぶりの再会ということで、
テヴィの登場ににキムとイネスは喜んでくれるかと思っていたが、
二人とも歓迎を装ってはいたが、微妙な空気が漂う。

それで自然と、このキムとテヴィ、そしてイネスに何があったのかに、
興味を抱かずにはいられず、どんどん先を読みたくなってしまった。

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「誕生日パーティー」の読みどころ

なんと言っても、ポル・ポト政権下のカンボジアの人々の生活が、
どう変化していったか。
国民がどういう運命をたどったかが、よく分かる。
ところどころ残虐で凄惨な場面もあって、
読んでいるとこころが痛む。

もちろんフィクションなのだが、
伝わっているカンボジアのポル・ポト政権の様子から、
実際にこんな感じだったんだろうと想像がつく。

難民として亡命することになる、キムとテヴィ。
二人の人生がどう絡んでいくのか。
少しづつ、断片的に語られ、次第にそれぞれの人生があらわになっていく。

二人の生い立ちはとても対称的。
キムは貧しい漁師の家に生まれ、弟の出産のとき母が死んでいる。
父と兄弟3人で暮らしている。

テヴィは、ホテルを経営する父(チャン・ヘン)と、母。
それに姉と弟の5人でくらしていた。
カンボジアの富裕層の家庭で、何不自由のない生活をしていた。

この貧富の差が、クメール・ルージュが地方を中心に台頭する理由になるのだが、
クメール・ルージュが政権を取ると、富裕層・知識層は弾圧されて、
地方の農村などに送られて、農作業や重労働で働かせれることになる。

この間までの、平和で牧歌的なカンボジアから、
暴力と恐怖のカンボジアへ一気に社会は変わっていく。

クメール・ルージュに参加した若者や少年は、
まともな教育も受けていない、
貧しい家庭の出身の者が多く、
金持ちや知識層を虐待することで自分たちのこれまでの不満を爆発させる。

テヴィの一家も、ある日突然、クメール・ルージュが家にやってきて、
一時間以内に家を明け渡すように言われる。
そして、農村へと移動して行くことになる。

この間までの、経営者と使用人の関係は逆転し、
支配する者とされる者になってしまう。

過酷な環境で、農作業に従事し、何とか生きのびようとする、テヴィの一家。
運命はさらに過酷な状況へと一家を追いやってしまう。

カンボジアのポル・ポト政権下の様子は、
時間を忘れて読みふけってしまうほど、リアリティーが感じられた
なんとなく知っていたポル・ポトやクメール・ルージュについても、
この本を読んで理解できたように思う。

 

「誕生日パーティー」に感じた不満。

いままで書いたように、
ポル・ポト政権下で、激しく運命が揺れ動くカンボジア人々の様子は、
のめり込んで読んでしまった。

ただ、後半になると、ちょっともっさりとしてくる。
読者を引っ張る力が一気に弱くなるのを感じた。
それは、キムの娘の視点の語りがあったり、
成長して、若者なったキム、テヴィ、イネスのパートがあったり、
ちょっと、あとから付け加えた感を感じてしまった。

同じ出来事を、違う人の視点で語るのも、
物語の面白さを減らしているように思う。
実はこうだった・・・、実はこうだった・・・、の部分は、
読んでいてそれほど興味が持てなかった。
物語に厚みを持たせようという意図が透けて見えるようで・・・。

ある程度読むと、ラストはなんとなく想像がつくが、
そこは評判の小説だけあって、
最後まで読者を楽しませるように書かれている。

 

「誕生日パーティ」 まとめ

ここまでポル・ポト政権下のカンボジアを、
リアリティーを持って感じられる本はないんじゃないかと思う。
漠然としていたクメール・ルージュと、
クメール・ルージュを支持したカンボジアの国民について、
理解できたように思う。

さらに、美辞麗句で大衆を引きつける、共産主義が、
いかに危険な存在かを教えられる。
共産主義の理想のもとには、どんなことでもやってしまう。
人殺しや虐殺さえも。
大衆が気づいたころにはもう後戻りできないほど、
社会は共産主義に支配され、あらゆる伝統や価値観を、
ズタズタに破壊していく様子は、必読だと思いました。

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