今回は本の紹介です。
「日本はこうしてつくられた」
直木賞作家・安倍龍太郎さんが、
古代の日本の歴史を、
舞台となった現地を訪れて考察する、
歴史ロマンに浸れる一冊です。
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本書について・読みどころ
大和朝廷成立前後の日本の歴史を、各地に残る遺跡や神社を巡って考察する一冊。
雑誌「サライ」の「連載「半島をゆく」をまとめたもの。
サライの連載を楽しみで読んでいるので、まとめて読むと、
さらに日本の古代の歴史に興味が湧く。
古代の歴史を訪ねて下記の場所を訪ねている。
・丹後半島
・島根半島
・国東半島
・紀伊半島
・房総半島
読んでいて興味深かったのは、房総半島。
黒潮にのって、近畿や西日本の人が房総半島に移り住んだそうだ。
そして、房総は、大和朝廷の奥州の蝦夷征伐の前線基地となった。
列島最後の前方後円墳があるのも房総半島で、
古墳の規模も大きく、百数十基もあるとのこと。
大和朝廷と房総半島が密接な関係にあったことを示している。
房総に根付いている文化も紀伊からもたらされたものが多いそうだ。
地曵網、捕鯨、醤油製造など。
海路だった東海道が、
やがて、陸路が開発・維持されて、房総半島の海路は廃れて行った。
古代の日本では海路での交流が盛んだったことを改めて実感。
神 = 信仰集団
神話と史実を結び付ける上で、大事なことが、
だとする説。
「神話に登場する神々は固有の存在というだけではなく、その神を信じた信仰集団のことでもある・・・」
と多くの専門家が指摘しているそうだ。
例えば、因幡の白兎の大国主命。本書には次のように書かれている。
「大国主は『天下を経営(つく)り、人民と家畜の病を療(おさ)める方法を定め、鳥獣、昆虫の災いを払う禁厭(まじなひ)の方法を定めた。これによって百姓(おおみたから)は今にいたるまで恩恵によくしている』(『日本書紀」)というから、医療や畜産、農業などの先進技術を我が国に伝えたわけである。
『因幡の素兎(いなばのしろうさぎ)の物語では、ワニをだましたために赤裸にされた兎に大国主は蒲の穂にくるまるように教えるが、蒲の花の黄粉には止血の効果がるらしい。大国主が漢方薬の知識を備えていたことが、こんなところにもさりげなく語られているのである。」
大国主命が、医療や農業などの進んだ技術をもった集団のことだったのではないか・・・、
という考え。とても興味深く読んだ。
「古事記」「日本書紀」がなぜ書かれたか。
白村江の戦いで唐の連合軍に敗れた日本は、唐と友好関係を結ぶべく、
唐を盟主とする冊封体制に入るために唐化政策を進めた。
それによって行われたのが、以下の政策だと本書はしている。
・本格的な遣唐使の派遣(710年)
・平城京への遷都(710年)
・「古事記の編纂」(712年)
・「日本書紀」の編纂(720年)
「『日本書紀』には王権の正統性を唐の皇帝に認めてもらうというもうひとつの目的があった」そうだ。
「日本書紀」を神話と史実をつなげる皇統の資料ととるか、
「手前勝手に歴史を捏造した史書」とするか、
両方の専門家の意見を掲載していて、著者は明確には判断していない。
個人的には、捏造するならもっとうまく作ったと思うので、
史実と神話をつなげるように辻褄を合わせてつくったのではないかと思うが・・・。
旅行ガイドとして・・・。
著者と専門家のグループが、遺跡や神社などをめぐって、
その土地の様子を綴っている本書。
学芸員の人に現地を案内してもらい、くわしく解説してもらっている。
著者と一緒に、現地を訪れる感覚で、
古代の日本の歴史のロマンに浸れる贅沢な一冊。
一般の旅行者では、なかなか学芸員の人に解説してもらえないので、
旅行する前の予習にもいいと思う。
カラーの写真も満載で、遺跡や神社を実際に訪れてみたくなる。
「日本はこうしてつくられた」 感想まとめ
大和朝廷の成立と皇室、そして古代日本の歴史について、
いろいろ勉強になり、考えさせられる一冊。
遺跡や神社をめぐる本書を読むと、
古代から日本は、自然を敬う神道文化が深く根付いていて、
すこし嬉しくなったし、感動してしまった。
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