「トマト缶の黒い真実」 ジャン=バティスト・マレ 著

トマト缶の黒い真実 本の紹介
どん
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今回は本の紹介です。
安くて重宝するトマト缶
その裏に隠されている真実に迫った、
ノンフィクションです。

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「トマト缶の黒い真実」は読むべきか?

何気なくスーパーで買っていたトマト缶。
大体100円くらいで、「ありがたい・・・」。
特に意識もしていなかった。

同時に、「100円って安いな・・・」と、
軽い違和感を覚えていた。

本書にはその安さの理由が書かれている。

トマト缶という切り口で世界を見ると、
格差や過酷な労働
グローバル経済の問題点がよくわかる。

 

 

本書と著者、ジャン・バティスト・マレについて

著者のジャン・バティスト・マレさんは、
フランス人のジャーナリスト。
著作の第3作の本書は、著者略歴によると、

 

2017年に刊行されると同時に大きな話題になり、
「身近な食材のトマトを通じて読者をグローバル経済の恐怖に陥れる」など
各メディアに絶賛された。

とのこと。

 

本書はタイトルにある通りに、
加工トマト製品がどう作られ、
どう世界を流通しているのかを、
中国、アメリカ、イタリア、アフリカの工場を訪ねて、
加工トマトの現実を明らかにしたノンフィクション。

 

トマトの加工品を切り口にして、
グローバリゼーションの歪み、貧富や格差問題を描いていて、
とても興味深く読んだ。

 

 

なぜトマト缶はあんなに安いのか?

 

スーパーで普通に売られているトマト缶。
その安さでいつも買っていた。
読んでいくと、その安さの疑問が解消される。

中国で、イタリアで。
低賃金の労働者を酷使してトマトの収穫が行われている。

 

冒頭、新疆ウイグル自治区で行われる、
トマトの収穫の様子が書かれている。
はっきりとは書かれていないが、
現地に住む人達(人種)の過酷で低賃金の労働の様子がわかる。

イタリアでも収穫は過酷な労働を強いられていた。
働くのは、アフリカから来る移民労働者達。
ゲットーと呼ばれる無許可労働者キャンプに寝泊まりして、
トマトを収穫する。

ゲットーについて、本書では以下のように書かれている。

ゲットーで暮らすことは、雑居生活をし、不便に耐え、食うや食わずで汚い水を飲み、ぎりぎりの生活を余儀なくされるということだ。マフィアの不当な要求にも耐えなくてははらない。日常的に暴力沙汰があり、移民の殺人事件も頻繁に起きている。それでも暮らしていくには家賃を払わなくてはならない。

 

それでもまだトマト缶を買いますか?

本書の帯にはそう書かれている。
また、次のようにも書かれている

・「中国産」が「イタリア産」になる流通の謎
・「添加物69%」の現場
・腐ったトマトの再商品化「ブラック・インク」とは?

 

 

 

詳しくはぜひ本書を読んでいただきたいと思いますが、
トマトの加工品に求められることはただ一つ。それは、

とにかく安いこと。

 

グローバリゼーションで、
価格競争に勝たなければ生き残ることはできなくなっている。


安くするために、
業者はあらゆる手法を実行している。
とても食品を扱っているとは思えないを、
本書は明らかにしている。

 

中国産のトマト加工品の安さは、
世界中を席巻し、
価格で太刀打ちできない地元の業者を一掃した。

 

かつて、フランスの植民地だったセネガル。
保護政策のおかげで、
フランス資本ではあるが、
トマト加工の会社(「ソカス」)が発展した。

セネガル市場を完全に独占し、
西アフリカにおいてパイオニア的存在にまでなっていたそうだ。

その後、セネガルは市場を自由化。
中国産の価格に勝てずに、ソカスは衰退し、赤字が続いているそう。
アフリカの濃縮トマトの市場の70%、
西アフリカでは、90%が中国産になっているそうだ。

 

 

トマトの加工の発展の歴史。

トマトの加工はイタリアから発展したらしいが、
その発展とともに書かれるイタリアの歴史も興味深い。

 

本書には以下のように書かれている。

かつて北イタリアのポー川流域では、肥沃な土地と豊富な水資源によって農業が栄え、
その恩恵を受けて加工トマト産業が誕生した。
その一方でポー川流域はイタリアでファシズム運動が誕生した土地でもあった。

 

新疆ウイグル自治区でトマトの栽培と加工が始まった経緯も興味深い。
中国の巨大トマト加工起業「カルキス」の創業者は以下のように語っている。

政府は食品産業の改革に取りかかっていて、
カルキスはその意向に応えなければならなかった。
それまで、新疆では小麦と綿花を主に栽培していたのだが、連作障害が起きていた。

じ作物を同じ場所で繰り返し栽培すると、
土壌の養分が不足したり病原体が増加したりして
生育不良を起こしてしまうのだ。
回復させるには、別の作物を植えて輪作しなければならない。
綿花の代わりに育てられて、
利益が得られる作物について調べたら、
トマトが一番よかったんだ。

 

過酷な労働が伴う農業。
綿花もそうだが、トマトの加工品も、
搾取された労働の上に生産されていることを忘れてはならない。

新疆ウイグル自治区産の綿花とか、トマトを使用しないと宣言した企業がいて、
話題になったのは北京五輪の始まる前のついこの間。

 

 

本書の感想まとめ。

 

刺激的なタイトルにくらべて、
内容は結構誠実なノンフィクションだと思った。
もちろん、衝撃的なトマト缶の真実が満載ではあるんですが・・・。

 

加工トマトの現状を追うことで、

今の世界の仕組みや問題点、
グローバル経済がいかに貧困や格差を生み、
過酷な労働を強いているかがよく分かる。

世界各地のトマトの加工現場を取材する著者の労力は大変なものだったと思う。

以前からこの本はぜひ読みたいと思っていた。
実際読んでみて、とても満足できる読書体験となった。

日頃、トマト缶がなぜこんなに安いのかと思っていたので、
トマト缶の裏の真実にすごく納得できるものがあった。

おそらく著者自身もトマト缶に関した、
似たような違和感を感じていたのではないかと勝手に想像する。

著者のトマトの加工現場を取材しようとした動機と、
トマト缶に抱く思いが、ある程度重なっていたから
とても興味深く読むことができたと思う。

 

どん
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訳がいいからか、文書は違和感なくすらすら読める。
とてもおもしろいオススメのノンフィクションです。

 

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